議会広報媒体の閲覧状況(議会広報紙・議会ウェブサイト)
現在の多くの自治体議会では議会広報の手法として、議会広報紙、ウェブサイト、動画配信システム、議事録検索システム等を活用しています。しかし、それらの媒体がどれだけ地域住民に閲覧されているかについては、ほとんどデータがありません。行政による意識調査は実施されていますが、議会による独自の意識調査はほとんど見られません。ここでは、どのような広報媒体がどの程度利用されているかについて、新宿区議会の『新宿区議会に関するアンケート調査』と杉並区議会、墨田区議会のアンケートで確認しました。
新宿区議会に関するアンケート調査の概要
- 調査地域 新宿区全域
- 調査対象 新宿区在住の日本国籍を有する満20歳以上方
- 標本数 2,500票
- 対象者の抽出 新宿区住民基本台帳から層化無作為抽出
- 調査方法 郵送配布・回収による法
- 調査期間 平成25年8月21日から9月9日
- 回収率 36.3%
- 調査内容 議会に関する基本的なこと/議会だより、ホームページ・インターネット中継/議会改革/その他
結果の概要・コメント
議会だよりの閲覧状況
- 「毎回読む」+「時々読む」 約50%
- 「ほとんど読まない」+「見たことがない」 約50%
区議会ホームページの閲覧状況
- 「よく見ている」+「時々見ている」+「1~2回試しに見たことがある」 約15%
- 「見たことがない」 約80%
区議会インターネット中継
- 「よく見ている」+「時々見ている」+「1~2回試しに見たことがある」 約3.5%
- 「見たことがない」 約95%
住民が望む議会による情報発信手法
- 「新宿区議会だより」 約50%
- 「情報冊子・ガイドブック」 約25%
- 「ポスター・チラシ」 約18%
- 「パソコン用ホームページ」 約16%
結果に対するコメント
-
- 市民は、議会の情報を得る手段としてホームページとインターネット中継をほとんど利用してはいません
- 新宿区民約34万人×95%=32万人以上の住民はインターネット中継を見たことがないことになります(極端な計算ですが)
※未回収分の結果はもちろん不明であるが、回収分の回答比率以上に「インターネット中継」を見たことがある住民が多いとは考えられない。そもそも、議会に関心がないから回答しないと推測されるからである。
- 住民が議会広報として期待する媒体はインターネットを活用した媒体ではなく、印刷媒体をである
- 印刷媒体である「議会だより」は約50%の住民に見られていることからも、まずは印刷媒体の質的改善を目指すべきともいえる
- この調査結果は今後どのように議会広報を展開していくべきなのかについて検討する貴重は資料になっている。
- この調査は住民基本台帳から無作為抽出した標本を対象に行われている点は評価できる
- 回収率が36.3%では調査結果の信頼性はそれほど高いとはいえない。
杉並区区政モニターアンケート『杉並区議会に関する意識調査』の概要
- 回答数 167件
- 調査期間 平成24年9月19日から9月2日
- 調査内容 杉並区議会に関する意識
結果の概要・コメント
区議会の活動をどのようにしてお知りになっていますか。(複数回答)
- 区議会だより 131人(79.9%)
- ホームページ 18人(11%)
- 議会インターネット中継 3人(1.8%)
- 傍聴 5人(3%)
- 議会の活動レポート 43人(8.5%)
- 議員個人のホームページ 14人(8.5%)
- 駅頭などでの区政報告 18人(11%)
- 知人が教えてくれる 7人(4.3%)
- 知る機会はほとんどない 27人(16.5%)
- その他 5人(3%)
結果に対するコメント
- 無作為抽出ではないので、母集団全体の傾向を推測することはできない。
- ホームページから情報を得ている人はわずか11%であり、80%は区議会だよりから情報を得ている。
- 議会インターネット中継はほとんど見られていない。
- 上でみた新宿区議会の調査では「区議会だより」は約50%が読んでいるという結果であるが、杉並区の調査では約80%となっている。これは、区政モニターを対象にした調査であり、回答者が行政や区議会に多少関心にある人に偏っていることが要因だと思われる。
墨田区議会に関するアンケート調査の概要
- 調査方法
(1)「区議会だより」に掲載したアンケート調査票の郵送又はファックスによる回答
(2)「墨田区議会ホームページ」から電子申請システムを利用した回答
※無作為抽出ではない - 回答数 262件
- 調査期間 平成25年8月6日から9月2日
- 調査内容 (1)回答者の属性/(2)議会の知識/(3)議会への関心/(4)議会への評価/(5)議会改革関連
結果の概要・コメント
区議会の活動をどのようにしてお知りになっていますか。(複数回答)
- 区議会だより 226人(85%)
- ホームページ 21人(8%)
- 本会議や委員会の傍聴 7人(2%)
- その他 15人(5%)
結果に対するコメント
- 無作為抽出ではないので、母集団全体の傾向を推測することはできない。
- ホームページから情報を得ている人はわずか8%であり、85%は区議会だよりから情報を得ている。
- 上でみた新宿区議会の調査では「区議会だより」は約50%が読んでいるという結果であるが、墨田区議会の調査では約85%となっている。これは、墨田区の調査は無作為抽出ではなく、回答者が区議会に関心にある人に偏っていることが要因だと思われる。
議会広報紙は一定の割合で読まれているが、ウェブサイトはほとんど見られていない
これら三つの調査結果から、東京23区議会においては議会の広報媒体としては、あくまでも「議会だより」が主であり、ウェブサイト・インターネット中継はほとんど利用されていないことが推測される。 また、現在では議会ウェブサイトの標準機能のひとつである議会インターネット中継はほとんど見られていないという状況にある。今後、議会ウェブサイトの利用率をいかに向上させるかが、どの議会においても共通の課題である。地域メディアによるニュース性をもつ論点に焦点をあてた編集が必要なのかもしれない。
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・世論調査の分析をもう少し工夫したい(調査会社に何を要望すればよいのか・・・)
・「議会だより」をもう少し読みやすくしたい
・ウェブサイトをもう少し使いやすくしたい - 広報課職員としての実務経験とアカデミックな視点をまじえた研修を心がけています。